食道楽 ━KUIDORAKU━

“食”に対する飽くなき探究心から更なる高みを求め至福の食道楽の道へ!!
豚組
「西麻布 豚組」

●住 所/港区西麻布2-24-9
●電 話/03-5466-6775
●訪問日/2007年11月25(日)
●入店時間/20:25
●オーダー/鹿児島純粋黒豚膳(ヒレかつ)3,500円・飛騨けんとん豚膳(ヒレかつ)2,200円・飛騨けんとん豚弁当(ロースかつ)2,800円・デザート×2
●会 計/10,300円


 この日は娘と渋谷で買い物をした帰りに、“豚組”の暖簾をくぐった。この店は西麻布の路地裏にある。この界隈には隠れ家風の飲食店が点在しているが、この店もそんな一軒といえるかも知れない。昭和30年代に建てられた民家を改装したというこの店は正に昭和の雰囲気を醸し出している。


 引戸を開け店内へ入ると目の前には手狭な厨房があり、二人の料理人が仕事をしているが、店のHPに紹介されている料理長の顔は見当たらない。
一階左手には四人掛けのテーブル席が四つあり、客は計6名程座っていた。二階席へ案内されたので奥の階段から上へとあがる。二階へ上がると正面にはこの店で“テラス”と呼ばれる二人掛けのテーブル席が四つあるスペースと、右手には小上がりがあり、そこには四人掛けの掘りごたつ式テーブル席が四つある。この時はテラスに二組と小上がりに二組の計11名の客が二階で食事をしていた。

 私達は小上がりの席へ通されたのでそこへ腰を下ろし、メニューを見ながらスタッフと相談する。脂身の多いロースよりもヒレが好みである旨を伝えたところ、この日は鹿児島純粋黒豚のヒレかつ膳と飛騨けんとん豚のヒレかつ膳を奨められたのでそれを注文した。
食事が運ばれてくるまでの間、改めて店内を見回すと、天井や壁、建具、それに照明の色・加減までもが昭和の懐かしい匂いがするノスタルジックな雰囲気の空間が演出されているようでなかなか良い感じである。

 この店では、全国の上質な銘柄豚を取り揃えており、その中から仕入れの情況などによりその日店に出せる最高の状態のものを提供する・・・というのが謳い文句で、ちなみにこの日のメニューは以下の通りだった。

≪豚組膳≫
◆豚組膳(5種類/5個)/3,000円
・ロース(萬幻豚・白金豚・飛騨けんとん豚)
・フィレ(鹿児島純粋黒豚・飛騨けんとん豚)

◆豚組膳プレミアム(3種類/6個)※限定/4,500円
・ロース(イベリコ豚・東京X豚)
・フィレ(幻豚)

≪ロースのとんかつ膳≫
◆飛騨けんとん豚(岐阜・下呂)/1,950円
◆飛騨けんとん豚・超厚切り(岐阜・下呂)/2,800円
◆イベリコ豚(スペイン・イベリア)※限定/4,800円
◆COMOX2(北海道・中標津)※新登場/3,500円
◆萬幻豚(静岡・朝霧高原)/3,500円
◆青空放牧アグー豚/(沖縄・大宜味村)/3,800円

≪フィレのとんかつ膳≫
◆飛騨けんとん豚(岐阜・下呂)/2,200円
◆鹿児島純粋黒豚(鹿児島)/3,500円

※全ての御膳には「小鉢・御飯・きゃべつ・味噌汁・香の物」が付き、御飯ときゃべつはお代わり自由とのこと

さて、では注文した食事の内容はいかがなものか。

※小鉢
先ず最初に供された小鉢はふろふき大根だ。見た目にも心安らぐ一品である、が、出汁は薄味だが科学調味料か添加物が使用されているのか、不自然な刺激と味がする。



とんかつが運ばれてくる前にとんかつの“ソースセット”なるものが先に用意された。それは「ソース、辛子、塩」の三点セットである。ソースと辛子は当り前であるが、塩が出てくるとは意外である。ちなみにここで供された塩は淡いピンク色をしたアンデスの岩塩とのことだが、とんかつに塩とは如何なものか・・・

※鹿児島純粋黒豚のヒレかつ
見た目にもしっかりしたボリュームがあり肉厚ある黒豚のヒレかつは、上質な黒豚を使用している。が、一切れ口元に運んだ瞬間、若干だが油の酸化臭が鼻につく。揚げ油の管理がしっかりなされていないのか、それとも経費節減のためかは分からぬが、いずれにせよ揚げたてのとんかつからこのような臭いがしているようではいただけない・・・それでも、一口かじってみると衣の揚がり具合は良く、中身は黒豚特有の旨味があり歯応え抜群である。が、肉厚のあるせいか中まで火が通っていない・・・これには呆れた。更にソースは太陽ソースをベースにした自家製ソースとのことだが、とんかつ用のソースとしては熟成が足りず、旨味が少なく酸味が強い。ソース自体のオリジナリティもそれほど強くは感じないので、ここはもっと研究して欲しいものである。ソースはこの一種類のみなので、行き場がなくなり試しにアンデスの岩塩にもチャレンジしてみたが、しょっぱいだけでまったく旨くない。黒豚自体の味がしっかりしているため、塩だけでは完全に負けてしまう。



※飛騨けんとん豚のヒレかつ
黒豚と比較すると若干ボリューム感に欠けるが、こちらもなかなか上質な豚肉を使用している。黒豚と比べ衣の色から若干揚げ時間が少ないことが見てとれる。が、やはり同じく油の酸化臭が鼻につく・・・一口かじってみると衣の揚がり具合は良く、味は黒豚に比べあっさりしているので女性には好まれるかと思う。ちなみにこちらは中まで火が通っていた。



途中、白飯と味噌汁に箸を伸ばす。米は水に浸し過ぎか研ぎ過ぎのようで腰と歯応えにやや欠けているものの、炊きたてのようなので、電子ジャーの中で長時間保温され乾燥した米よりは良い。赤出汁の味噌汁はとんかつに併せるには弱く物足りない。もっとしっかり出汁を引くべきである。

※香の物
上から時計周りに、野沢菜漬け・きゃべつと胡瓜の浅漬け・大根の燻り漬け



※デザート/黒蜜のゼリー
黒蜜のゼリーは一般的な“ゼリー”という食感ではなく、もっと硬く弾力と歯応えのある一品である。ミルクときな粉が添えられさっぱりとしている。


※デザート/紅芋のアイス
紅芋のアイスはさっぱりしているものの、どこかまったり感があり想像以上に甘い。女性には受けるかも知れない。



 この店は、これまでのとんかつ屋にはない新しいスタイルのとんかつ屋である。素材となる豚肉の仕入れにこれほど手を拡げこだわった店は他にないだろう。また、客の立場からは幾つもの銘柄豚を食べ比べできるというメリットがあり、これはこれで楽しめる。更に、スタッフの接客態度も丁寧で好感がもてた。それらの点でこの店のアイデアと努力は評価できる。しかしながら、上質な銘柄豚を取り揃え他店との差別化を計ろうという着目点は良いが、それ以前にとんかつ屋としての基本的な力量不足が否めない点が誠に残念であった。油の管理や素材の種別による揚げ方の違いなど、他の一般店で当り前になされていることが出来ていないということは、この日厨房にいた料理人の注意力が散漫なのか未熟であるとしか思えない。若しくは、これだけのブランド素材を豊富に取り揃えているのだから、その優位性と話題性だけで客が皆喜ぶであろうという慢心が店側にあるのだとしたら、それは大きな間違いである。

それともうひとつこの店の大きな欠点はソースが頼りない点である。ソースはとんかつに欠かせない存在であり、主役であるとんかつの味を引き立てる重要な役割を果たしている。これだけ上質な銘柄豚を取り揃えているのだから、素材に合ったソースを研究し、熟成させて欲しいと切に願う。アンデスの岩塩をご愛嬌でテーブルに並べるくらいなら、もう一種別のタイプのソースを開発し供して頂きたいと思うのは私だけであろうか・・・

 上質な素材を数多く調達し、それをとんかつという庶民の愛する一品料理で勝負し、客を楽しませようというこの店のポリシーにはエールを送りたい。が、まずはソースを含めとんかつという料理の基本を見つめ直すところから立直して欲しい・・・

※お土産/飛騨けんとん豚弁当(ロースかつ)




かわむら
「かわむら」

●住 所/中央区銀座7-3-16 東五ビル1F
●電 話/03-3289-8222
●訪問日/2007年11月19(月)
●入店時間/20:45
●オーダー/おまかせ×2・ビール×2
●会 計/64,680円



 ネット上でも多くのレビュアーが“最も予約の取れない店”の一つとして位置づけているのがこの「かわむら」だ。先週、知人から「かわむらの肉が食べたい!」と猛プッシュを受け店に確認したところ「通常のディナータイムは年内の予約は一杯です・・・」とのことで、それでも何とかお願いをして席を確保したのがこの時間だった。
銀座の超人気店であるかわむらは、仕入れる牛肉を特定の産地や銘柄に限定せず、その日に仕入れられる最高の和牛を仕入れるというシェフのポリシーのため、客の立場としてはその時々において各産地や銘柄の最高級の和牛が食べられるという期待と楽しみがあるわけだ。

かわむらは由松から真っ直ぐに数奇屋通りを有楽町方向へ100m程歩いた右手の路地に入ったビルの一階にある。木製のドアを押して店内に入ると、左手に厨房を囲むようにこじんまりとした7席のカウンターがあり、その他にテーブル席などはない。席に腰を下ろし、先ずはビールで喉を潤す。シェフから「何か食べられないものはございますか?」と尋ねられたので、まったく無しとの返事をして料理はお任せすることに。あとはただ黙って座っているだけで万事物事が進んでいく。

この日献立は次の通り

●前菜
鯛・帆立・生サーモンのカルパッチョに蒸鮑と牛刺が添えられる。全てやや厚切りにて供されるのでボリューム感がある。刺身はどれもこれも抜群の素材を程良く寝かせてあり充分な旨味が出ている。大振の蒸鮑にはうっすらと味つけがしてあり柔らかくとても旨い。牛刺は見た目の色艶も良く最適な状態にエイジングされていると想像できる。それを一口食してみて納得する。この前菜ひとつでこの店のレベルの高さがうかがい知れ、この先の料理に期待が膨らむ。

ここで、シェフからステーキの焼き方を尋ねられたのでレアでお願いする。
厚み6〜7cm程はあろうかというヒレ肉の塊が目の前の炭火グリルに乗せられる。

●コンソメスープ
二品目に供された透明度の高いコンソメスープは、前菜での期待を確信に変えるものであった。手間をかけ丁寧な仕事が施されたこのスープは、色、香り、味の三拍子が見事に揃った一品で、この店のレベルの高さを無言で物語っているようだ。上品な味わいでありながらも滋味深く、コクと香り高いこのスープは身も心も温まる逸品である。

●野菜サラダ
百合根・蓮根・牛蒡・胡瓜・アスパラ・銀杏・レタスに旬の果物である柿なども入り、マヨネーズベースのソースがかかり、上からベーコンフレークがかかる。このサラダに入る素材はそれぞれ下ごしらえしてあるようで、ここでも一手間かけてある。家庭的な味で旨い。

●ヒレステーキ/180g
炭火で焼くこと約30分程度だろうか、焼きあがったメインのヒレ肉が目の前に置かれた。この日の牛肉は岩手産の極上和牛を使用しているとのことで、付合せには太く上質な隠元と下ごしらえされた玉葱が添えられる。別皿でステーキ用の塩と醤油が供された。厚みのある肉塊にナイフを入れる。弱い力ですっと切れる。それをなにもつけずに一口頂く。柔らかくて和牛特有の旨味が口中に拡がる。逆に高級和牛独特のクセの強い脂の風味は角がとれ円やかに緩和されさっぱりしている。更に驚くべきは味があることである。活字ではうまく表現できないが、「何もつけていないのに味がある」と言うことだ。
もう一口何も足さずにそのまま食する・・・やはり旨い。塩も醤油もつけなくとも和牛の旨味がはっきりとした味として伝わってくる。岩手産の和牛とはこれほど旨いものなのかと考えさせられる。ここで隠元と玉葱も味わってみる。隠元は色鮮やかで太くて歯応えも良く旨い。前もって加熱され下ごしらえの終わった状態で添えられた玉葱は柔らかく充分に甘みがありこちらも旨い。付合せの野菜は二品とも上質である。

ここでステーキへと戻り、添えられた塩を少々つけて食してみる。味が全体に締まり非常に旨い。これだけ旨味の凝縮した和牛ならばさっぱりと塩だけで充分に完食できそうである・・・鉄板で焼いたステーキならば150〜160g程度食すると程々に胃袋への負荷がかかるものだが、このステーキはぺロリと胃袋へ収まってしまった。このときシェフに今のステーキは何グラムあったのか尋ねてみると「180g前後ありましたよ」との返答が返ってきた。んー、確かに見た目には大きな肉塊であったので、そのくらいの分量だったかも知れない。しかし、食した感覚的には150gあるかないか程度の感じであった。

●海老のカレーライス
食事はガーリックライスと海老のカレーライスとどちらが良いかと尋ねられたが、この日はカレーがお奨めとのことでカレーを頂くことにした。海老の旨味がしっかりとカレー全体に溶け込んでおり旨い。

●デザート
全て手作りのデザートは、プリン、バニラアイス、ヨーグルトのシャーベットの中から好きなものを自由な組合せで選べる。勿論全てを食することもできる。が、このときはプリンを選んだ。このプリンもやさしい味わいながら甘過ぎずさっぱりとしていて旨い。

 一通り完食して思うことは、この店の仕事はその全てが平均的にレベルが高く丁寧で繊細である、ということだ。また、かわむらシェフの人柄も良く、丁寧な接客を心がけられているところにも好感がもてる。最後に、なぜこれほどまでにかわむらのステーキは旨いのかとシェフに問いかけてみた。すると、低温の炭火で脂を落とさずにじっくり火を通すことにより、肉の中に脂が閉じ込められ和牛特有の繊細な旨味が引き出されるのだという・・・

是非、年内に再訪したい一軒である
京味
「京味」

●住 所/港区新橋3-3-5
●電 話/03-3591-3344
●訪問日/2007年11月5日(月)
●入店時間/19:00
●オーダー/おまかせ×2
●会 計/119,175円


 このところ、仕事が忙し過ぎてなかなかブログの更新をする余裕がない。身体が二つあるか、一日の時間が50時間あるならば、もっと楽に物事が運ぶだろうに・・・などとボヤきながら過ごす忙殺の日々である。よって数少ないこのブログの読者のために、近日掲載予定で現在下書き中の店を幾つか紹介すると、

◆荻窪「四つ葉」/すっぽん

◆銀座「割烹かじ」/日本料理・割烹

◆麻布十番「世良田」/焼鳥

◆銀座「七面草」/割烹

◆麻布十番「クチーナ・ヒラタ」 /イタリア料理

◆銀座「由松」/天ぷら

◆銀座「福臨門」/広東料理(上海蟹)

などなど言わずと知れた有名店ばかりである。が、しかし、“旨いモノ”と“そうでないモノ”を忌憚なく書かせて頂こうと考えているので、乞うご期待!?

 さて、余談はこれくらいにして、本題に入ることにしよう。この日も京味で美味しいものを頂ける機会に恵まれた。京味へ向かうときはいつも心が躍るようである。「今日はどんな美味しいものを供して頂けるのだろう・・・」と。暖簾をくぐり店に入ると既に連れが待ち構えていた。この日は二組五名の先客が先発しており、私達を含め都合七名の客がカウンターへ腰を下ろしていた。

この日の献立は次の通り

●小鉢
海鼠腸(このわた)の飯蒸し
一口サイズのおこわに海鼠腸(このわた)が乗る。暖かくてもちもち感のあるおこわ御飯に海鼠腸の塩辛がぴったり合い旨い。

●先付
鯛の肝のしんじょう・ウニのしんじょう・きゅうりと大根のごま和え・零余子(むかご)のフライ

 と、ここで西さんから「うちの宣伝をして頂いていると聞いたので、御礼状でも書こうかと思っていたんですよ!」と、いきなり振られ驚いた・・・
どうやらこのブログの存在を知られてしまったようである、、

●半生からすみ
薄くスライスした極上のからすみは酒のつまみにぴったり合う。

●白子焼
軽く炙った鱈の白子が二つ供された。外は香ばしく中はねっとり柔らかくて旨い。

●焼松茸
今年、西の松茸は丹波を始め、広島、岡山辺りはみな不作であったと言われており、逆に岩手産、長野産などが市場に多く出回っていた。が、ここ京味では小振りながら中開き〜開きの丹波産松茸が二本、二つに裂いた状態で軽く醤油が塗られ供された。今回は酢橘ではなく柚子が添えられている。先ずは器ごと持ち上げ顔に近づけ香りを楽しむ。香ばしくて強い松茸の香りが食欲をそそる。それを一口食すと、ジューシーな旨味と香りが一気に口の中へ充満した。秋の味覚の王様を味わい幸せを感じる瞬間である。次に柚を絞ってみる。また酢橘とは違う柚の香りに更に食欲が刺激される。
私も10月中旬に京都の八百屋から丹波産の上物を自宅用に1kg送らせ、自宅で焼松茸を楽しんだ、が、やはりこちらで供して頂く味には到底かなわない・・・

●海老芋の含め煮
今年初物として供された海老芋は京都の伝統野菜のひとつ。きめの細やかさを生かしたは含め煮は絶品。

●造り
この日は、「鯛、伊勢海老、赤貝」の三種である。
鯛はカワハギの肝を溶いたポン酢につけて頂く。カワハギの肝のまったりした濃厚な旨味とポン酢のサッパリとした清涼感とが絶妙なハーモーニーを奏でるかのごとく、口の中で絡み合い美味極まりない。伊勢海老は焼海苔で包んで頂く。包丁で丁寧な仕事が施された赤貝は身が締まり、こりこりした歯応えがありながらも硬過ぎず柔らか過ぎず旨い。

●鱧松茸鍋
ざく切りの松茸に、脂の乗った秋鱧と水菜が入る。こちらの松茸も開きが使用され、その香りは上品で強い。相変わらず出汁はしっかり引かれており、最後の一滴まで残らず頂いた。思わず「もう一杯!」と言いたくなる旨さである。

●焼き物
「若狭のぐじの塩焼き」と「ウズラの照り焼き」に松茸の足の煮物が添えられる。炭火で焼かれたぐじの身は締まっていながら柔らかく、甘みと旨味が凝縮されている。別添えにされたぐじの皮はきれいに剥がされ、こんがりとパリパリに焼かれ芳ばしくコクがありこれまた旨い。程よく味の浸み込んだウズラの肉は身が締まり、歯応えがあり美味である。

●松茸のフライ
松茸の一番旨い食し方は最もシンプルな炭火焼きである。が、しかし、京味で供される松茸のフライはそんな私の思いに一石を投じる一品である。こちらも中開きから開きの松茸二本分を二つに裂いた状態でフライにして供される。小皿のウスターソースにつけて頂く松茸のフライは外がカリっと揚がり中はジューシーで柔らかく、ソースとの相性が良いのか非常に旨い。「もう一本!」と言いたくなる・・・

●蕪の柚あんかけ
こちらは前回同様、大きめの蕪のうえから、暖かくて柚の香りと出汁のきいたあんがかけられている。あんのなかには一口サイズの海老のそぼろと松茸が入っており、箸ですっと切れるほど柔らかな蕪と海老のぷりぷりの食感とを、とろりとしたあんがひとつに包み込む。

●松茸ご飯と鮭はらす御飯
〆の食事は松茸御飯と定番の鮭はらす御飯をそれぞれ一膳ずつ頂いた。

●わらびもち
この日のデザートは蕨餅を頂くことに。葛きり同様、京味では蕨餅も手作りで作ってしまう。蕨餅にかけられたきな粉も香ばしく上品な味である。


この日は、いつもよりややハイペースで食が進み、所要時間は90分を楽に切った。別に早食い自慢をするわけではないが、やはり食欲の秋なのだろうか・・・当然、先発していた先客も追い抜いてしまう結果となった。

いつもながら、旬の味覚を尽くした数々の料理を供して頂きとても幸せであった。
福治
「銀座 ふぐ福治」

●住 所/中央区銀座5-11-13 幸田ビル3F
●電 話/03-5148-2922
●訪問日/2007年10月29(月)
●入店時間/19:00
●オーダー/おまかせ×2・ビール・その他
●会 計/106,000円


 一足早く冬の味覚を味わおうと、東京一とも言われる河豚の名店“福治”を訪問した。浅草で13年、銀座で20年、多くの食通を魅了してきたこの店は豊後水道の天然虎河豚のみを供することで知られており、河豚にうるさい客に大変人気のある店である。

【メニュー】
◆竹/26,000円
通し・ふぐさし・ふぐちり・雑炊・香の物・水菓子

◆松/33,000円コース
通し・ふぐさし・ふぐ唐揚・ふぐちり・雑炊・香の物・水菓子

◆単品
・ふぐさし/12,000円
・ふぐちり/12,000円
・ふぐしゃぶしゃぶ/12,000円
・ふぐ唐揚/8,000円
・焼ふぐ/8,000円
・湯引き/6,000円
・皮さし/4,000円
・白子焼/時価

 上記が福治の通常メニューであるが、この日は大将に美味しいところを見繕ってもらい、おまかせコースを供して頂くことに。

以下この日の献立である。

●通し
烏賊の塩辛・さざえの壷焼き・栗の茶巾絞り



●河豚刺し
「天然の虎河豚は〆てから二日は寝かさないと身が硬くて食えない・・・」とは大将の弁。厚めに引かれた刺身は身が締まり、味、歯応えともに充分で文句なく旨い。



●白子焼
「この時期は白子がまだ親指ほどの大きさしかないので・・・」と、大将からあまりお奨めしないような口ぶりで言われたが、「それでも!」とお願いして出して頂いたのがこの白子焼。可愛い一口大の白子が五つ酢橘を添えて供された。口元に運ぶと芳ばしい香りが鼻をつく。それを口の中へ入れると中身はとろけるように柔らかく、まったりと旨い。



●河豚唐揚
薄味のついた河豚の唐揚は衣が薄くカラっと揚がっている。中身はほくほくでふんわりと柔らかい。美味。



●焼河豚
顎の周りの部分を使った焼河豚は、シンプルながら素材の良さが際立つ逸品で、薄塩にて芳ばしく焼かれている。骨までしゃぶりついて頂いた。美味!



●河豚しゃぶしゃぶ(ここから最後の雑炊まで全て大将に仕切って頂く)
これは白身魚の刺身ではなく河豚の切り身。見た目の色艶も良く、この大きな厚切りの切り身をしゃぶしゃぶで頂く!



●河豚ちり(具)
本来は他にもっと野菜類が入るが、ここまで沢山河豚を胃袋へ詰め込んでしまったので、〆の雑炊へ辿り着くために具の量を減らして頂いた。



●雑炊
鍋を空にし、雑炊へ移る前に鍋の中に残った透明な出汁のスープを小椀にて供して頂いた。一口呑んだ瞬間に「旨い!」と声が出た。河豚でこれだけ旨味のある出汁がとれるとは驚いた。そしてこの出汁でつくった雑炊は最高に旨かった!



●香の物
自家製のぬか漬けはこの雑炊によく合う家庭的な味。



 ここまで約1時間30分、河豚以外に食べたものといえば先付の小鉢と鍋の中の白菜、豆腐、それに漬物くらいだが腹は満腹で、大いに満足な河豚づくしであった。
食事のあとに近年の異常気象の煽りを受けてか、豊後水道の天然虎河豚も漁獲高が低く、その分仕入れが大変なので11月からは提供価格の値上げをせざるを得ないと大将が嘆いていた。最近では三河湾辺りの虎河豚も多く市場に出荷されているようだが、やはり味が違うのでこの店では扱わないとのこと。なるほど・・・それでも今シーズン10回は来店する旨約束して、満腹の腹をさすりながら福治を後にした。
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