食道楽 ━KUIDORAKU━

“食”に対する飽くなき探究心から更なる高みを求め至福の食道楽の道へ!!
銀座 田中屋



「手打ちそば 明月庵 田中屋」

●住 所/中央区銀座6-6-19
●電 話/03-3571-8228
●訪問日/2007年3月30日(金)
●入店時間/15:50
●オーダー/五目おから840円・玉子焼840円・地鶏の焼鳥(正肉・レバ)840円・
 辛味大根そば1,150円・御膳せいろ630円

 田中屋は言わずと知れた名店で、多くのそば通たちからも支持されるこの界隈では一番のそば屋である。店の場所は晴海通りからソニー通りへ入り新橋方向へ150メートル程歩いた左側にある。

この日は月末の慌ただしさで何かとバタついてしまい、時間も時間なので遅目の昼食をこの田中屋でとることにした。私のように不規則な時間帯に食事をとる客にとっては田中屋のような休憩なしの店はとてもありがたい。

さて田中屋定番のつまみといえば玉子焼、地鶏の焼鳥、薩摩揚あたりが人気の上位を占めているが、中でも出色なのが地鶏の焼鳥である。この焼鳥は素材は無論のことタレの味付けがとても上手く、そこらの焼鳥屋で食する焼鳥よりも断然旨い。
主役のそばは辛味大根そばにせいろを一枚別に注文した。このセットが私の定番である。まず先に辛味大根そばを頂く。辛味大根の独特な辛さと爽やかさが口の中から食道を通過し胃袋へと染渡る。この辛さが食欲をそそり、それがまた鼻に抜けるところがたまらなく良い。あっという間に一杯完食してしまった。



お次はせいろである。薬味は生わさび・大根おろし・わけぎの三種あるが、私は生のわさびを少し多めにすりおろし、そば汁を少々入れた器の中へ落とす。田中屋のそばは美味で香りもよく歯応え喉越しどれもがレベルの高いそばである。そんなそばだからこそまずはそば汁をつけずにそのまま頂く。二口、三口、せいろの上にのっているそばの半分くらいはそば汁なしでも飽きずに食せる。残り半分くらいになったとき初めてそば汁につけて頂く・・・「う〜ん、旨いそばだ!」いつ食べてもそう思う。そして、そばそのものの旨さもさることながら、このそばに負けていないしっかりしたそば汁との相性もすごく良い!

※不規則な時間帯にとる昼食はこの店のそばが一番多い。



割烹 七面草
「割烹 七面草」

●住 所/中央区銀座8-4-23 クレグラン銀座2F
●電 話/03-3575-4678
●訪問日/2007年3月28日(水)
●入店時間/19:55
●オーダー/お造り(鮪・鯛・海老・赤貝)・焼き蛤・胡麻豆腐・酢の物・卵焼き・鰈の煮付・
  鯛茶漬け・フルーツ(マンゴ)※全て×2
●会 計/送り(※1名25,000円程度)

 銀座には“知る人ぞ知る”と言われる名店が数多く存在する。その中でも銀座を愛する本物の食通から別格として扱われる店がある。そんな一軒が“七面草”だ。
銀座界隈をテリトリーにしている紳士淑女の中にもこの店のことを知らないとか足を踏み入れたことがないという人は多く、ましてやネット上では多くのグルメ情報等を公開しているレビュアーからのレビューすら見当たらない。(もしかしたら七面草をネット上で紹介するのはこのブログが世界初となるかも知れない・・・)

では七面草とはどんな店で何が別格なのか。ひとつには一見の客はこの店に入れない。
支払も現金やカードは受け付けない。しかし、七面草の本質はそうしたシステムではなく料理そのものの質が高く何を頼んでも完成度の高い料理が供されるという安心感にある。
店はこじんまりしているが清潔感があり、家庭的な雰囲気でありながらも食事をする場の空気として心地よい緊張感を保っているところがこの店の素晴らしさでもある。

この日は仕事のパートナーであり大切な友人でもある弊社社長と七面草の暖簾をくぐった。普段はお互いに多忙な為、こんな時間に二人でゆっくり食事をするなんてことは滅多にないのだが、幸運にも互いのスケジュールが調整出来たので私の方から彼を誘った。
先ずはビールで乾杯をし、水入らずで仕事の話しをしているとオーダー通りにひとつずつ料理が運ばれてくる。刺身は全て新鮮で特に赤貝は色もよく肉厚もあって歯応え抜群で旨い。蛤はひと目で鹿島産のそれとわかる大振りなものが二つ出され、熱々のうちにすだちをひと絞りして頂く。胡麻豆腐は七面草を訪れたならば必ず頼みたい逸品のひとつで、一口食べた瞬間に笑顔がこぼれ、口の中からじわじわと幸福感に包まれていく。酢の物、卵焼きと続き本日メインの煮魚が出される。甘過ぎず辛過ぎず絶妙なる味加減で煮付けられた鰈は味が浸み込みやわらかく旨い。ここまでどれも完成度の高いものばかりで、出された料理に対する不安や不満など微塵も感じさせない。
それにしてもこれだけ連続して、素朴でありながらもレベルの高い和の匠を味わうとやはり日本人に生まれて幸せであると実感するものだ。



さて、お次はお待ちかねの鯛茶漬だ!(写真下)
ここ数年銀座でも鯛茶漬ブームのような流れがあり、多くの日本料理屋が鯛茶漬けを締めの食事のメニューに加えてきた。しかしながら七面草のそれはこの店が別格であるということを最後の最後に客に明確に認知させるかのような美味極まるものである。この鯛茶漬は茶漬とは言いながらも出汁やお茶などはかけずにそのままご飯にのせて焼海苔で巻いて頂くのが最も旨い食べ方だ。



本日最後に供されたフルーツはマンゴであった。ちょうど食べごろでほどよい甘みと酸味にマンゴ特有の食感が加わりこれまた美味であった!


最後に七面草のメニューを大公開・・・
この他にも旬の食材をつかった料理を供してくれる。





まい泉



「まい泉 青山本店」

●住 所/渋谷区神宮前4-8-5
●電 話/03-3470-0071
●訪問日/2007年3月25日(日)
●入店時間/20:40
●オーダー1/黒豚ヒレかつ膳/2,940円(黒豚ヒレかつ・キャベツ・ご飯・味噌汁・お新香・
  大根おろし・夏みかんのシャーベット)
●オーダー2/お好み膳/1,575円(一口ヒレかつ・車海老フライ・エビクリームコロッケ・
  キャベツ・ご飯・味噌汁・お新香・大根おろし・夏みかんのシャーベット)
●単 品/カニときゅうりのサラダ・ポテトサラダ・ヒレかつサンド6切れ×2(お土産)
●会 計/6,982円

 今日は娘を連れまい泉 へ行ってきた。
私が初めてこの店の暖簾をくぐったのはもう20年以上も前のことだ。ちょうど現青山本店が現在の姿に拡張され間もない頃のことだった。当時は風呂屋を洋館風に改築したとんかつ屋ということでも話題になっていたが、実際に店に来てみてその威容ともとれる巨大な店の造りに「これがとんかつ屋か・・・」と驚いたものである。しかし、驚いたのは店の造りだけではなくその巨大なとんかつ屋に行列が出来ているではないか!その時、「とんかつという食べ物は行列してまで食べたいと思うものか・・・!?」と並ぶか否か自分の中で考え戸惑ったことを記憶している。

あの頃から今日までにまい泉がに大きく変わったことと言えば、ひとつは出店の数が増えたことだ。有名百貨店のレストラン街や地下の食品売場、空港、その他等々お惣菜・お土産売店まで含めるとの100に迫る出店の数を誇っているようだ。それともうひとつは新メニューが幾つか開発されたことだろう。中でも特筆すべきは沖田の黒豚である。黒豚の神様といわれ養豚界では初となる内閣総理大臣賞を受賞した沖田速男氏が営む鹿児島沖田農場産の黒豚がこの店のラインナップに加わったことは大きい。

だが、ここで二つはっきりさせておこう。一つ目はまい泉のとんかつはここ青山本店で食べるとんかつが一番旨いしこの味は以前から変わっていない。でも、本店の味を知っている客が支店で同じものを食べても旨くは感じないということ。二つ目は、豊富過ぎるメニューの中から何を選んで食するべきか・・・いつも迷ってきた。これにはその時々の体調や思いもあるだろうが、とんかつを食べることを目的としてこの店に来たのならばそれはズバリ“黒豚のヒレかつ膳”である。これはこの店に20余年通った私が出した結論だ!ということで本日も迷わずに黒豚のヒレかつ膳を注文した。



写真では本物の旨さを伝えられないのが残念だが、厚みは2cmオーバーはあろうかという代物だ。が、中身の豚肉は一枚ずつ手作りで仕込まれとても柔らかく仕上げられているので力をこめることなく簡単に切れる。これが“箸で切れるとんかつ”たる所以である。更に衣に使うパン粉も自家製のパンをこのとんかつにベストマッチするよう挽かれていて、さっぱりとしたサクサク感がたまらなく良い。当然のことながらとんかつを揚げる油の調合も研究し尽くされていて、まい泉のとんかつは食事中も食後も油でもたれるようなことがない。
さて、お次はソースだ。とんかつにとってのソースはなくてはならないもので、銀座の由松のように「旨い天ぷらは天つゆなしで食え!」とばかりに塩とレモン汁だけを出されてもそれは反論なく美味しく頂けるものだが、とんかつをソースなしで食べろと言われてもそれはまた違うように思う。いやとんかつにはソースがあった方が旨い!
と、ここでこの店のご主人の名言を一言ご紹介する。「肉と衣とソースが三味一体となって初めて口の中でとろけるようなおいしいとんかつができあがります。」なるほど、やはりとんかつにソースは欠くことのできない大切なパートナーのような存在なのである。故にまい泉ではソースにも抜かりがない。
この店では全部で三種類のソース(全て自家製)を用意しているが、客の好みで使い分けられるのは写真の甘口・辛口の二種類である。※写真中央はカラシ



だが、黒豚のとんかつにはヒレ、ロースに関わらず“黒豚専用ソース”というものが特別に供される。以前は他のソース同様に“黒豚”と書かれた陶器の壷のまま出されていたが、本日は黒豚膳がひとつのせいか器に適量移された状態にて出された。※下の写真
実はこのソースがあるからこそまい泉のとんかつはうまいのだと断言できる。この特製ソースのベースはりんごで、その他野菜を中心に自家調合のうえ醗酵させる秘伝のレシピで造られており、自然な甘みと程よい酸味がとんかつの油を中和してくれるので、さっぱり美味しく頂けるというわけだ。黒豚のヒレかつにこのソースをつけて口の中へ入れると正に“三味一体”の言葉の意味を噛み締めることになる。



最後になるが、この店には実は黒豚のヒレかつをも凌駕するかのような凄いメニューが存在する。それは“沖田のメンチカツ”(315円)だ。とんかつはまい泉の完成された技術をもってすれば沖田の黒豚でなく従来の黒豚で上等だ。むしろそちらの方がとんかつとしての完成度は高いと評される場合もある。しかし沖田のメンチだけは如何ともしがたい領域にある。沖田農場で飼育された黒豚とまい泉というとんかつ屋で培われた技術が融合してこそ誕生した逸品であろう。このメンチカツをあれこれ活字で表現するのは難しく一言でいうならば「こんなメンチカツはこの店でなくては食べられないだろう」ということだ。
沖田のメンチカツは一日の生産数量に限りがあるので、売切れになってしまうことが多く注文できたときは幸運である。ちなみに残念ながらこの日も売切れであった・・・

帰りは満腹の腹をさすりながら、定番のヒレかつサンドを土産にぶら下げ店を後にした。

田川
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「うなぎ 田川」

●住 所/杉並区西荻窪2-3-4
●電 話/03-3333-5239
●訪問日/2007年3月18日(日)
●入店時間/13:20
●オーダー/蒲焼定食/3,150円(蒲焼・ご飯・肝吸・お新香)
         鰻重(梅)/2,100円(鰻重・肝吸・お新香)

 今日は朝から三鷹の方へ用事があったのでその帰りに娘を連れ田川の暖簾をくぐった。この田川は城西地区では荻窪の安斎と並び称されるうなぎの名店として有名だ。

引戸を開けて店に入ると正面奥には店主家族の茶の間だろうか小上がりがあり、そこから弟店主が声を掛けてくる。「40分くらいかかりますが宜しいでしょうか?」こちらが了承すると入店を許される。店内は入口を入って左側に調理場があって、右側に客用の小上がりがある。席数は少なく小さな3〜4人掛けのテーブルが1つと、2人掛けのテーブルが2つあるだけだがこの日はお昼時というのに客は誰もいない。
靴を脱いで座敷へあがり、一番広めのゆったりしたテーブルへと腰を下ろす。メニューを見て注文を伝える。娘は鰻重の梅。私は蒲焼定食だ。

ちなみにメニューの中身を列挙すると

【鰻重】
竹  /1,800円
梅  /2,000円
特上/2,500円

【蒲焼・白焼】※ご飯無し
竹  /1,600円
梅  /1,800円
特上/2,300円
特上/2,800円

【蒲焼定食】
3,000円

※以上全て税別
といった具合で、ユニークなのは蒲焼の特上が二種類あることだ。

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さて、注文も終わりあとはうなぎが焼き上がるのをじっくり待つだけである。この田川も名店と称される他の店と同様に客の注文が入ってからうなぎをさばき始める。ただ、客席から調理場が丸見えなので仕事の進み具合が観察できるところが面白い。注文から5分後、裏でさばかれたうなぎが串に刺され炭火にかけられる。うなぎを料理するのは弟店主の仕事でその他の仕事は兄店主が担当している。更に5分後兄店主の手によって米が炊飯器にかけられる。このとき炊飯器の中へ10cm程度の長さの炭が二本入れられた。おそらく備長炭だろう。しばらくすると蒸篭が用意され、うなぎががその中へ移され蒸される。途中蒸篭の蓋のうえから熱湯がまわしかけられ更に蒸される。蒸篭から取出されたうなぎが再度炭火にかけられる。米が炊上がり、肝吸の準備も進み、注文からぴったり40分後、テーブルに鰻重と蒲焼定食が並べられた。見事な仕事ぶりである。

まずは肝吸の蓋をあけ一口すする。更にもう一口・・・極薄味のお吸物である。うなぎの味を生かすためにあえてここまで薄味に仕立ててあるのだろうか!?いや如何なるメッセージがこめられているといしてもこれはいかがなものか、、
次に大皿へ盛付けられたうなぎへと箸を伸ばす。一口食べて考える。そしてもう一口。蒸し、焼き共に良い仕事が施されていて上手く仕上がっている。表面は程よく焼けていて中はふっくら柔らかい。肉厚も歯ごたえも申し分ない。だが何かが引っかかる・・・
ここで口直しに炊きたてのご飯を頂く。見た目にも艶々して米の一粒一粒が活き活きとしているので上手く炊けていることが見て取れる。そのご飯を口の中へ・・・普通に旨い。米を炊くときに炊飯器の中へ炭を入れたせいか米糠臭がまったくしない。しかしズバリこれは鰻重に合う米である。鰻重は重箱に敷き詰められたご飯の上からタレをかけるので、そのタレとご飯が絡み合った状態で口の中へ入ってきたときに旨く感じるか否かが勝負である。従って米そのものがいくら素晴らしくてもそれ自体が単独で主張するのではなくタレとの調和があってこそ鰻重は旨いのであるという理屈はわかる。ただ“あえて欲を言うならば”と前置きしたうえで言わせてもらうと、名店と称されるからこそ蒲焼のようにご飯にタレをかけずにうなぎとご飯を別々に食する客にはもう一段上の米を選別のうえ供して欲しいと願うのである。(鰻重より蒲焼定食の方が値も良いわけだし・・・)

次に木彫りのひょうたん容器に入った山椒を振ってみる。
ん?これはダメだな。山椒の新鮮な風味と香りがとんでしまっている。保存状態が宜しくないのか、適正な賞味期限が過ぎてしまっているのだろう。最後にタレを少々たらして食してみる。なるほど・・・先ほど何かが引っかかっていた理由がわかった。うなぎの蒸し・焼き具合は申し分ないのだが、このタレは些か問題有りのようだ。やや辛口なのは然程問題ないが、このタレには何か独特な塩辛さというか隠れた苦味のような味があり、うなぎが食道を経て胃袋の中へ収まったあとも舌にその後味が残っている。これが旨味としての後味ならば良かったのだが・・・そうではない。
付合せの漬物はきゅうり・大根・人参のぬか漬けと奈良漬で、おそらくぬか漬けは自家製だろう。少々塩気が強すぎる感がある。
結局完食はしたものの食事中ずっと例の後味が気になってしまい、なにやら複雑な心境で店を出た。

最後に一言添えるならば、店内の衛生面にはもっと気を配って頂きたい。家族経営なのでその点がつい甘くなってしまうのか、店の掃除が行き届いていないのが残念だ。

手打ちそば いけたに



「銀座 いけたに」

●住 所/中央区銀座7-5-15 蒲田ビル1F
●電 話/03-3571-3471
●訪問日/2007年3月16日(金)
●入店時間/23:30
●オーダー/辛味大根のしらすおろし・きんぴら・ポテトサラダ・牡蠣の酒蒸し・
 生粉打ちせいろ(1,100円)×2枚・ビール×2本
●会 計/7,150円

 銀座にはうまいそば屋がない。なぜだろうか・・・
これだけ多くの飲食店が共存する街なのに、どうして国民食ともいえるそば屋が少ないのか。こんな疑問を抱いているのはきっと私だけではないはずだ。でも、だからこそそんな銀座に存在している数少ないそば屋は貴重なわけで、“いけたに”はそんなそば屋のひとつだ。

日航ホテル裏からソニー通りを4丁目方向へ約150メートル程歩いた右側にいけたにはある。(余談だが実は、そのまま直進して更に150メートル程歩いた右側には有名な“明月庵 ぎんざ田中屋”がある。)
いけたには夕方18:00〜深夜2:00の営業なので、昼食時には開店していない。依ってお昼時に銀座でうまいそばが食べたくなったときは田中屋へ足を運び、夜遅い時間にそばが食べたくなったらいけたにの暖簾をくぐる。これがこの界隈の定石だ。他にもそば屋なら老舗の“よし田”や深夜の“ふく留”という選択肢もあるが、やはり田中屋といけたにが双璧だろう。

いけたには人気店で席数も少ないうえに、金曜の夜ということもあってすんなり座れるかやや心配だったが、ドアのガラス越しに店内を覗くと空席があった。よしよしとそのまま入店してとりあえずビールを注文する。
この店のつまみで私の好物は“厚揚げ”である。あつあつで大き目の厚揚げ一丁が丸ごと出てくるので、小腹が空いている程度のときや一人のときは用心しないと、これだけでそこそこ胃袋が満たされてしまう・・・が、この厚揚げを生姜と醤油で頂くシンプルな食べ方が私はこの上なく好きだ。
ところが残念なことにこの日は厚揚げが売切れとのことで軽くショックを受けた・・・
気を取り直して注文を再開する。
酒の進み具合に併せ適宜つまみが出される。辛味大根しらすおろし〜きんぴら〜ポテトサラダ〜殻付き牡蠣の酒蒸しの順でつまみを平らげる。どれもそれなりに旨いが、辛味大根のしらすおろしは素材の良さが生かされたつまみとして出色である。

いけたに定番&お奨めのつまみ‘辛味大根しらすおろし’


そしていよいよメインの生粉打ちせいろへと辿り着く。生粉打ちせいろはこの店の看板メニューでそば自体は太目だが少量なのでせいろのみを注文する場合には大盛りにするか2〜3枚注文すべきである。このそばの特徴は太目であるということと、歯ごたえと喉越しはよろしい。そばつゆも独特ながら出汁とかえしのバランスがとれていてやや甘口にまとめられている。ここのそばにはよく合っている。あえて厳しく指摘するならば‘そば自体の香りと味’にはもう一押し欲しいところで、この点ではご近所の田中屋がやや優勢である。ただ、冒頭でも触れたように銀座で、しかもこの時間にこのレベルのそばを食べさせてくれる店は他には見当らないということが事実で、これからも私はこのいけたにの客であるということも真実である。



きく
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「銀座 きく」

●住 所/中央区銀座8-4-3 山田ビル2F
●電 話/03-3574-7237
●訪問日/2007年3月15日(木)
●入店時間/22:30
●オーダー/冷奴・きんぴら・しらすおろし・小鯵のフライ・鮑のバター焼き・生ビール×6
●会 計/17,700円

 仕事に追われ、晩飯も食わずにもうこんな時間になってしまった・・・まぁこんなことは日常茶飯事だ。が、腹が減っていたのでまずは会社を出て、とりあえず胃袋の中へ何でも詰め込みたいと考えながら王子と近所をブラつく。
(ちなみに王子とは某最大手通信系企業のエリート社員で私の子分である。歳はひとまわりも下だが仕事のセンスと物事を組立てる能力は抜群で、人付き合いも上手なので「10年後にはウチの会社の社長をやれ!」といつもはっぱをかけている可愛いヤツである)

いつものことながらこんなときは特別豪勢なものを食いたいわけではなく、むしろ家庭的な普通の食事がしたい。そんな時に“きく”はもってこいである。通常の晩飯時には満席で座れないことが多いが、この時間なら問題なく座れるはずだ。
店は日航ホテルの裏通り(ソニー通り)を日航ホテル裏から4丁目方向へ30〜40メートル歩いた進行方向左側の雑居ビルの2階にある。その丁度道の反対側には人気の懐石料理店“小十”がある。
きくは決して気取った店ではない。料理も特別素晴らしいものなどない。ただ、お袋が作ってくれた“懐かしい家庭の味”を思いおこさせてくれるような食事が出来る店だ。そんな店が銀座にある・・・
食事を済ませると、女将さんが下の道まで降りてきて笑顔で見送ってくれる。
こんな店だからこそきくは愛されいてるのだろう。

※小鯵のフライはこの店の看板メニューとして有名で、この界隈の高級クラブから出前の注文が入ることも

手打ちそば・うどん 志な乃
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「愛宕 志な乃」

●住 所/港区西新橋2-31-8
●電 話/03-3431-3663
●訪問日/2007年3月14日(水)
●入店時間/14:15
●オーダー/合盛1,100円(手打ちそば・手打ちうどん)・けんちん汁350円

 愛宕神社前から愛宕通りを虎ノ門方向へおよそ200メートル程行った進行方向右側に“志な乃”はある。その古びた佇まいの一軒蕎麦屋には、それなりの歴史観を感じさせる趣きがある。店の引戸をガラガラと開けると愛想の良いおばちゃんが明るく声をかけてくれ席へ案内してくれる。店内は4人掛けのテーブル席が7席あり、こんな時間でもサラリーマンやOL達で半分以上の席が埋まっている。この状況からも志な乃がこの界隈で愛されていることが覗える。

席に着くなり“合盛”を注文。合盛とはこの店自慢の手打ちそばと手打ちうどんの両方を食せる一番の人気メニューだ。これにプラスけんちん汁のセットというのが志な乃の定番で、冷たいそばとうどんをすすりながら、たまに温かいけんちん汁を口の中へ流し込むと何とも言い難い幸福感に包まれ、これが病みつきになってしまう・・・というわけだ。

待つことおよそ10分(そばだけなら5分)。合盛が運ばれてきた。陶器の器にざるが敷かれ、その上に存在感のあるぶっ太い田舎そばとつやつやのうどんがきれいに半分ずつ盛付けられている。薬味はネギ・わさび・大根おろし・白ゴマ・大葉・生姜。賛否両論あろうかと思うが私はそばから先に頂く。なぜなら、胃袋が先にうどんで満たされてしまうと嗅覚と味覚が鈍ってしまい、そばの香りと味が堪能できなくなってしまうからだ。
というわけで早速存在感のあるそばをつゆにつけずにそのまま頂く。太くて歯ごたえのあるこのそばは小さなお子ちゃまやお上品なお嬢さんには向かないかも知れない。二口、三口とそばだけで楽しんだあとつゆを用意する。器につゆを1cm程度移し、そこへわさびを溶かす。そばはこれだけで頂く。何とも言えない食感を楽しみながら鼻に抜けるわさびの刺激がまたたまらない・・・あとは一心不乱にそばをすするだけ。

さて、そばを完食したらお次はうどんだ。器に少しつゆを足しそこへ大葉とネギを加えて、つやつやしたうどんを落とし込み一気にすする。一般的にうどんはそばと違ってそれ自体の香りを楽しむという食し方はしないように思うが、またそばとは違う食感と喉越しがある。志な乃のうどんは四国の讃岐うどんほど丸太くはなく、どちらかと言えば視覚的には色艶形から上州の水沢うどんが太くなったような麺と表現した方が正確だろうか。だが、この腰の強さともちもちした食感にしっかりした歯応え、つるっとした喉越しはやはり志な乃のうどんである。
と、こちらも全て完食!

最後に残念な話しがある。
この地で昭和44年に創業した志な乃は、本年3月23日をもって閉店するとのこと。何でも愛宕通りの整備拡張計画がありこの場所での営業が出来なくなってしまったそうだ・・・
ただ現時点では未決定ながら、新店舗を赤羽橋に構える計画があるそうなのでそちらが開店した際には是非足を運びたいものである。

【志な乃の主なメニュー】
●手打ちそば(うどん)
小盛/900円
並盛/1,050円
小盛/1,150円

●合盛
小盛/1,000円 
並盛/1,100円

●深山そば
※要予約(そば粉100%)/2,100円

●けんちん汁/350円

野田岩
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「五代目 野田岩 麻布飯倉本店」

●住 所/港区東麻布1-5
●電 話/03-3583-7852
●訪問日/2007年3月10日(土)
●入店時間/18:25
●オーダー/蒲焼・桐(蒲焼・ご飯・きも吸・お新香・大根おろし)
●会 計/5,500円

 “創業160余年の老舗”「うなぎの野田岩」といえば天然うなぎにこだわる東京の名店として有名だ。 ネット上でも多くのレビュアーがコメントを載せているのでここでは店の詳細については省くことにする。

店に入店したのは土曜の18:25頃で、入り口脇の待合席でしばし待機を。するとタイミング良く六本木のクラブFのAママから電話がかかり、ちょっとした世間話しをしている間に和服姿の御姉さんから声をかけられ二階の座敷へ案内された。店内はほぼ満席といった風で、となりの席にはやや先に入店したと思われる家族連れがメニューを広げていた。60代とおぼしき品のよさそうなご夫婦とその娘夫婦だろうか家族団欒という雰囲気で和やかに談笑している。

この時期は天然モノの鰻が入手できないということで普通に蒲焼を注文。(天然モノは4月〜12月くらいまで)基本的に私の場合、鰻を頂くなら「うな重」よりも、鰻とご飯を別々に食する「蒲焼」の方が好みである。よってここで注文したのは、「蒲焼の桐」。ビールをちびちびやりながら待つこと約30分、蒲焼が運ばれてきた。同時に隣の席にも鰻重が四つ運ばれてきた。

まずは肝吸いを一口・・・すぐに「旨い」と感じた。出汁はやや甘口であっさりしていて塩気が控え目なお吸物である。次に鰻へと箸を伸ばし一口頂く。山椒をふりかけもう一口。更にタレを少々かけてもう一口。正直なところ「旨い」とは感じない。
鰻自体の味はクセがなくほど良く仕上げられてはいるものの、時期的なせいか脂の乗りはイマイチだ。だが最も深刻な問題は鰻が柔らか過ぎることだ。その為に箸で切る度にボロボロと崩れ落ちてしまう。故に口の中に入れたときの‘うなぎの食感’と‘歯応え’が物足りない。タレもさっぱりと薄味でまとめられているので、これを上品な味と表現する向きもあるかと思われるが・・・いかがなものか

口直しにご飯の蓋を開けた瞬間「あれっ?」と思った。
それを一口頂いて確信した。ご飯は味も炊き方も名店の名に相応しいそれとはとても言えない代物だ。まず目で見た瞬間に米粒に艶がなく、寝てしまっているので米の炊き加減も炊上がってからの保存状態も宜しくないことが想像できる。実際に食してみるとやはり米本来の味と香りが希薄で歯応えもない。これにはガッカリさせられた。
付合せのお新香はごくごく普通。箸休めとして付いてくる味つきの大根おろしはすりおろしてから一定の時間が経過してしまっているようで、大根の程好い辛みと風味が失われてしまっている。最後に肝吸いの中に残った鰻の肝をパクリと頂いたがこちらはアクも苦味も無きに等しいお味であった。一通り完食はしたものの、満足感は・・・
次回は、天然モノに期待することにしよう。

ちなみに、となりで鰻重を食していた家族連れも重箱の蓋を開けたときには「うわ〜美味しいそう!」と喜んでいたようだったが、食事を始めてからは一度も「美味しい」という言葉を発することはなかったようだった。

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